【再掲載】【制作過程紹介】オンライン一橋祭 装飾企画展示 "メイキング・オブ"「木の葉とガラス」
何故かブログ内容が初校(ドラフト)に戻ってしまいましたので、再作成して再掲載いたします。
掲載写真は以前と同じですが、文章は多少異なります。ご容赦ください。
(2020年12月2日)
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今年のオンライン一橋祭に装飾企画展示される「木の葉とガラス」。
その展示作品のハイライトである「世界のブナの葉」のガラス角皿の制作過程を紹介いたします。
ガラス作品というと皆さん「吹きガラス」を連想されると思いますが、当工房では電気炉を使って制作しています。(その理由は私が「ナマケモノ」だからです。ご興味ある方は弊ブログ「なぜ吹きガラスをやらないのか?」 https://ameblo.jp/guinomi77/entry-11846435501.html をご参照ください。)
今回制作した世界のブナの葉の角皿は、1枚が縦17.5cm、横約22.5cm、厚さ約7mmで、重さは約650gです。
ほぼ同じサイズで4枚制作したのですが、その仕上がりが次の写真です。横に並べると約90cmになります。
葉柄の下部の高さを揃えて、高さや大きさを比較できるようにするため、長方形かつ平坦な形状(いわゆる板皿)にしています。
制作方法としては「パート・ド・ヴェール」という手法で、「ガラスの練り粉」という意味なのですが、要は「石膏の型に粉ガラスや粒ガラスを入れて、(電気炉で)熔かして成形する」手法です。
従って、石膏の型作りから始めるわけですが、それぞれのブナの葉の形や特徴をしっかり出すために、
①石膏型の底にあたる部分に、葉っぱの輪郭や葉脈を彫り込んで、
②彫った溝に濃い緑色(松葉色)のガラスを入れ
③その上に若葉色のガラスを入れて焼成します。
まずは石膏型に彫り込む輪郭や葉柄部分を石膏型に鉛筆で描きます。
皿のサイズとブナの葉の実寸サイズとのバランスが難しいところです。
輪郭と葉脈を彫り終わったのが次の写真です。葉の部分は、若草色を入れるために周囲より少し低く彫り込んでいます。
次に、加熱焼成後に石膏とガラスを離れやすくするために、石膏型に離型剤を塗ります。(少し淡いブルーがかった色になります。)
離型剤を塗って乾燥させたあと、石膏型の枠を組みます。
角皿の形をした「石膏の箱」(蓋なし)といった感じです。(右上に見えるのは後でご紹介する丸皿の石膏型です。)
次に、ブナの葉の輪郭と葉脈に松葉色のガラスを入れます。粉ガラスが散ってはみ出してしまうので、結構面倒くさい作業です。
その上に若草色のガラスを入れます。
4枚全てに若草色のガラスを入れたところです。
この上に透明ガラスを入れるのですが、粒ガラスを若草色の上に直接入れると若草色がムラになってしまうので、前もってブナの葉の形をした透明のガラスを焼いておいて、若草色の上に被せてから粒ガラスを入れます。
これでガラス充てんは終了で、あとは電気炉で焼成です。
今回は4枚を一度に焼成したので、4段重ねにして電気炉に入れて焼成しました。
焼き上がって一番上の段を出したのが次の写真です。
電気炉から出したばかりで、石膏型に入ったままの4枚がこちらです。
先ほどの粒ガラスが熔ける際に、枠の石膏型にへばりついてバリができることがあります。
次の写真の右上の水滴のようなガラス粒がバリです。
このようなバリや、多少の凸凹を「ダイヤモンドペーパー」で磨き、平滑にします。
最初は目の粗いもの(#150)位から始めて、#400→#1000→#1500と磨いてツヤを出します。(これも結構、繊細な力仕事です。)
磨き上がって、水洗いした直後がこちらです。
これで完成です!!!
さて、世界のブナの葉の角皿は「板皿」でしたが、湾曲した丸皿や豆皿も今回制作しています。
ガラスの「板状」のものを作る過程までは一緒ですが、湾曲させるためにはその板状のガラスを「型」に入れて加熱し、湾曲させます。(技法は「スランピング」といいます。)
左が丸皿で、素焼の皿の形をした型を使い、右は豆皿でこちらの型は100円ショップで買った小鉢です。どちらも型にガラスをくっつけないために「離型剤」を紙状にしたセパレートペーパーを挟んで加熱焼成します。
先ほどの「世界のブナの葉」で若草色の抑えの葉の形をした透明ガラスの板と、豆皿の型のツーショットがこちらです。(小鉢の型はそのままでは豆皿の底が不安定なので石膏を入れて底を平らにしています。セパレートペーパーの残骸も残ってます。)
今回の世界のブナの葉の角皿や丸皿、豆皿の制作にあたっては、形もさることながら、色合いをどうするか試行錯誤しました。
その進化(?)の過程を示しているのが次の写真です。
一番左は乾燥してますが本物のブナの葉、一番右が完成作品です。
下の色紙を敷いた豆皿2枚は、色合いに悩んだ結果、「葉っぱを透明ガラスにして、敷物の色を葉色にしたら良いのでは?」という発想の産物です。(笑)
今回の制作で活躍した電気炉の面々が次の写真です。
左側の小さなデスクが作業スペースで、再利用する石膏型が棚に並んでいます。
このような電気炉を使ったガラス工芸にご興味がございましたら、お気軽にご連絡ください。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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